11月1日→東京/多摩美術大学 相生道部 演武大会[29]
2015年11月1日、相生道の演武会が、東京都内で行われます。
先日の記事では名古屋の相生道演武(南山大)について掲載しましたが、今回は関東・多摩美術大学での演武会情報です。
この演武会では1時間たっぷり、多彩な体術や武器術が披露されます!
↑美大生が製作した、今年の宣伝用画像です。これは「体坐術」の一手から、トドメのシーンですね。
この演武大会は、11/1[日]から11/3[火]の三日間開催される多摩美大の「芸術祭(芸祭)」の一部企画で、体育館(通称「武道館」)を使って実施されます。
★芸祭の特設サイトはこちら → 多摩美術大学 芸術祭2015
GoogleMapで「多摩美大」で検索すると世田谷キャンパスへの道順が案内される場合がありますが、鑓水(やりみず)の八王子キャンパスですので、お間違えのないように!
GoogleMapのリンクを貼っておきます。
★多摩美大 八王子キャンパス「体育館」→ https://goo.gl/maps/of5AqsycdAU2
(↑2014年の第28回 演武大会 の様子)
「相生道(そうせいどう)」は、富山県の宇奈月町で佐々木家に伝えられてきた武術(天武無闘流柔術)を元に、十代目宗家・佐々木武久師範が、現代に適応する新武道として開創したもので、立体的かつ剛柔一体の攻防展開を旨とするユニークな武道です。
源流に伝わる武器術も併伝しており、上達の度合いに応じて希望者には指導され、それが演武会にて披露されます。
多摩美術大学相生道部は、ある意味では「相生道」よりも古い団体です。当初、佐々木師範が埼玉県朝霞市・新座市で「天武無闘流柔術会」の看板で指導していた時代に創部されたためです。
当時、常設の町道場や、スポーツセンターでの指導、そして大学の部活動での実験的な指導を通して、佐々木師範は新武道の構想を練り、いまの「相生道」を作りました。
そして多摩美大相生道部ではごく初期から開催されている「演武大会」は、今年でなんと29回目を迎えます。
開催概要
演武予定
- 六級演武
4月に入門した1年次生による集団演武です。基礎的な技ばかりですが、だからこそ相生道の本質的な部分が色濃く出ます。 - 剣術
二名が木刀で打ち合う形演武によって、源流に伝わる剣術を披露します。ことに一本目は太刀の時代の風格を残していると言われ、一方で二本目以降は打刀の時代への適応・進化の姿となっています。
「進化」という言葉は二〇世紀に取り入れたものですが、時代に応じて変化していくというそのコンセプトは16~17世紀頃、すでにこのような形で内包していました。 - 抜刀術
天武無闘流の抜刀術は、立業がメインです。が、今回披露する中にも座り技はあります。元来は一人の演武者による単独演武の形ですが、佐々木武久師範が相対(組太刀)に編んだものを披露します。これも佐々木師範による全くの創案というわけではなく、後半の箇条の技を持ってきて、前半の技に組み合せたものです。 - 添え物割
相生道の「試し割り演武」ですが、単に拳足で板を割ってみせるだけではありません。
この演武では、複数の敵を捌いて倒し、とどめの加撃で板を割ります。
拳の威力だけならば専門家には及ばないかもしれませんが、相生道の剛手技(突き蹴り)は、その変幻自在の体捌き、無限の柔手技(投げ・関節技など)と組み合わさって初めてその真価を発揮すると言えます。 - 棒術
双方が六尺棒を持ち、突き技や打ち技を駆使してギリギリの間合いで攻防します。
六尺(180cm)という長さの武器を身体の一部、手の延長のように扱えるようになってこそ、ギリギリで突きや打ちを見切り、他の武器術や体術に応用していくことができます。 - ぶんぶんばり術
相生道・天武無闘流で最も特徴的な武器、「ぶんぶんばり」。
巨大なヌンチャクのような姿をしてますが、連結部の鎖が長く、術技特性は全く異なります。二刀流のように棒の部分で打ち、あるい2メートルを越すリーチで振り回し、あるいは鎖を用いて相手の自由を奪うなど、驚くべき動きを見ることができるでしょう。 - 体坐術
相生道は、天武無闘流の「拍打術」と「体坐術」を組み合わせて整理・体系化したものです。
体坐術は、突き技や打ち技を受けて投げ倒して制圧する技術体系ですが、ある意味では現代の相生道ほどに洗練されていない──遠慮無くバキッと関節を折り、喉を砕く危険な技に満ちています。 - 護身術
天武無闘流は当初、剣術を表芸としていましたが、無刀捕りの開眼などを経て、柔術への道を開きました。「護身術」の演武は当時の形(かた)そのものではありませんが、無刀捕りや小具足(短刀術)の技、三尺棒による制圧術、布を用いた捕手などを統合し、現代生活に合うようにまとめたものです。 - 主将演武
前言を翻すようですが、相生道は単に「立体的かつ剛柔一体の攻防をする、だけの武道」ではありません。むしろその本質は「相手との相互関係を認めたところに発する」とも言えます。
自分の技や力によって圧倒するだけでは、つまらないではありませんか。相手の技を認め、受け入れた上で、制御・制圧する──部を率いる主将の演武は、可能な限り、その現出を目指します。
(2014年 演武大会から)
なお、例年どおり多摩美術大学相生道部は、今年も模擬店を出店します。武道館の裏手にあたる「模擬店B地区」で「ちゃんこ鍋」を販売します。
店舗名は、伝統の『留め停(とどめてい)』です。
(2014)
これは相生道・天武無闘流の「留め手(とどめて)」──投げ倒した相手にトドメを刺すべく振り上げた拳──に由来するものです。
倒れた相手への加撃は、力の逃げ場がないため、素手であっても必殺の手段となり得ます。そして演武においては大きく拳を振り上げ、戦闘術としての必要以上に静止する場合もあります。
演武とは、ある意味では他者(社会)に「見せる」ものでありますから、「さあ、トドメですよ」という「キメ場」だ、という側面も、もちろんあります。
しかしこれは時代劇の殺陣(たて)ではなく、あくまでも「相手を生かし、相手と生きる武道」──「相生道」の体現です。留め手とは必殺の手段であり、必生の証明でもあるのです。
11月1日は、日曜日です。珍しい体術と武器術の演武や、その他たくさんの美大生による展示、発表、そして模擬店などを楽しむために、八王子へ足を伸ばしてみてはいかがでしょうか?
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■名古屋の「南山大学相生道部」の2015秋の演武会の記事
■日本相生道協会 公式サイト